今日はゲームスクールで講義の日だった。現在、生徒達にはコンセプト(一番やってみたいこと。広告におけるそれとはチョット違う)をいかに具現化する為に最適のゲームアイデアを考え(作り)出すか?という基本的なことをしつこく教えている…いや、訓練させている。何故、そんな基本的なことを訓練させているかというと、理由は簡単。創作におけるその基本的なが未熟だからだ。基本が未熟故に練られていないアイデアでいくら企画書っぽいモノを書いたところで、その企画はぜんぜん説得力のないものになってしまうのは火を見るより明らかだ。だから、生徒達に無駄な苦労をさせない為にも急がば回れな訓練をさせている。


現実のプランナーの現場で要求される技は、企画書という書類を書くことよりも、現実のゲームを制作する為の仕事の段取りがつけられる能力要求されれば即、対処できるアイデアが考えられる(作れる)能力だ。つまり、ゲームという商品を作るために必要な基礎的なを持っている職人さんが必要とされるのだ。口先三寸野朗やはったり野朗はいらない。あと、ゲームというのはインタラクティブなエンターテインメントだからインタラクティブという見えない関係性から発生する遊戯性のロジックをモデル化できる能力も要求される。つまり、それらは大工やエンジニア等の数多ある技術屋さんに要求されるものと全く変わらないのだ。(結構、理系な仕事なのだよ) ところが、どうもプランナー(ゲームデザイナー)を目指す若者の中にはその事を勘違いしている者が結構多い。つまり『安直なマーケットをして、既成のゲームシステムを参考にして、ササッと閃いたことをササッとゲームっぽい形にすればコンピュータゲームになる』と考えているふしがあるのだ。(たまにプロにも、この程度の者がいるから、ぶっとばしたくなる)


あと、ゲームクリエイターを目指す者がプロのクリエイターに『クリエイターになる為の大切なことは何ですか?』と質問した時に、よく返ってくるアドバイスに『沢山本や漫画を読んだり、映画みたり、美術や音楽を嗜んだり、いろんな体験をした方が良い』というのがある。確かにそれはとても大切だ。が!勘違いして欲しくないのはそのアドバイス自体は目的ではないということだ。あくまでそれらは創作の肥やしに過ぎない。肝心なのは、その肥やしから『如何に本質を読み取る能力を鍛えることができるか?』『如何にそれらから自分のフィルター(感性)を養うことができるか?』そして『如何にそれらから新しいモノを産み出す為のヒントを見つける眼力を養うことができるか?』なのだ。そして、それらを基に『如何に斬新なインタラクティブな遊戯システム(ロジック)を構築することできるか?』が重要なポイントとなるのだ。


決して、映画でも表現できる映像や、本でも語れる物語既成のゲームのシステムをくっつけることがゲームデザインの本質ではない。まずシステム(ロジック)を創り、そしてそのゲームに必要な、そのゲームでしかできない映像と物語をくっつけることが本質なのだ。


1958年。ニューヨーク州ブルックヘイブン研究所員だったウイリー・ヒギンボーサムが見学者に科学を楽しんでもらう為に開発した5インチのオシロスコープ上で動く『テニスゲーム』。それが最初のコンピュータゲームだった。それから、半世紀近くをかけコンピュータゲームは進化し続けてきた。ドットだけのシンプルなゲームが今やバーチャルリアリズムといわれるほどのモノに進化した。その進化の原動力は何か? もちろんコンピュータの技術的進化もあるが、それよりもっと大切なもの。それはまぎれもなくコンピュータと人間が、永き人間の歴史の中で初めて登場させたインタラクティブなエンターテインメントという新しい遊戯性に対する『未来への夢』だったと思う。


 写真は『世界最初のコンピュータゲーム』


 コンピュータはそのを膨らませる為に技術進化という形で人間に協力してきた。まるで『私達の技術でさらに新しい遊戯性を創っていってください』と言うかのように。 だから昨今の美麗な3Dポリゴンと使いまわしのゲーム性でその進化をストップさせるのはコンピュータに対するゲーム創作者の怠慢だと思う。だから、これからゲーム業界を目指す若者には、その怠慢の壁を打ち破り、コンピュータが喜ぶであろう未来への夢を追い続けて行って欲しいと思う。その為にも基礎的な力をつけ技術を養うことが大切なのだ。


 ゲームクリエイターを目指す生徒達よ、若者達よ。コンピュータゲームは終わってはいない。ただゲーム史のあるステップが終了しようとしているだけだ。次のステップは必ずやってくる。ゲーム史の半世紀はその繰り返しだったのだ。だから、ひとつの時代の使命を果たし、想像力の枯渇した古参のゲームクリエイター(私もか?)達からイニシアチィブを奪い取るぐらいの勢いで、次の時代を築ける本物の力(技術と想像力)をつけていって欲しい。 志高くあれ!


 ――ゲーム制作に携わって23年。説教クサイ文鳥


写真は『世界最初の商業用コンピュータゲーム PONG(ポン)』 (c)ATARI 1972


 写真は私が創った『世界最初のプロレスゲーム THEビッグプロレスリング』(笑) (c)TECHNOS JAPAN


PS:舌足らずの個所があったので、追記、修正しました。

投稿者 mori-game

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