マーズ・アタック以来、最近のティム・バートン監督の作品はどうも彼の本領が発揮されていないのではないか? と少々不満だった私だったが、新作の”チャーリーとチョコレート工場”では久々にシザーハンズのような”ティム・バートン節”が観れるとの前評判を聞き、早速映画館へ足を運んでみた。


――で、感想。


おもしろかった。原作はイギリスの童話のようだが、まるでマザーグースの様なブラックユーモアに包まれたストーリーと、バートンの毒気に溢れた愛情ある演出がうまく融合され、どちらかというと”大人向けの童話”という雰囲気であった。ただ、ウィリー・ウォンカの工場内での出来事が後半ちょっと間延びした感はあったが、ラストシーンが久々のティム・バートン節炸裂でそれも帳消しとなった。


特に私がこの作品で気に入ったのは、”貧しきチャーリーとその家族”に対する監督のこだわりだった。極端にボロボロの住家。貧し過ぎる食事。典型的な貧乏な家族構成。でも、心だけは豊か――。そんなステレオタイプな貧乏家族を嘲笑うでもなく、かといって哀れんだり同情するでもなく極自然に描いていた。昔からそうだが、彼の作品には世の中の弱者(貧乏人、無能者、障害者、フリークス等)に対する、歪んでいるとも思われかねないただならぬ愛情と、それとは逆に強者に対する懐疑と皮肉に満ち溢れている。普通ならこういう”弱者と強者”の関係をテーマにすると、つい、説教臭く偽善っぽい作品なりがちだが、バートン監督のすごい所はそういう処を一切臭わせないところだと思う。ディズニーに憧れ、ディズニーに身を費やした彼が、あえてディズニーと決別したのもわかるような気がする。(いや、別にディズニーが偽善的だと決め付けるわけではありませんが… ゴニョゴニョ……)


キャラクターもいい。お馴染みのジョニー・デップの名演技振りと、まるで監督が紙の上でデザインしたキャラにあわせて配役したようなその他の役者の風貌は見ていても楽しい。それと忘れてはならないのは、ちょい役ながらも重要な立場で映画を引き締める”クリストファー・リー”の存在だ。彼は、最近、”ロード・オブ・ザ・リング”シリーズや”スターウォーズ”シリーズの最新作に立て続けに出演し映画を引き締めている。いい役者だ。私が思うに、監督が彼をこの作品に起用した理由はそれら数々のヒット作に出演したからではなく、やはり昔のフランケンシュタインやドラキュラ等のフリークス系の名優だった彼に対するティム・バートン監督なりのリスペクト(敬意)だと思っている。


とにかくラストはいい。必要以上にヒネルこともなく、素直に心うつ展開は好感が持て私の琴線に触れた。正直、いい歳をして思わずウルッときてしまった。(苦笑) 嗚呼、家族愛! シザーハンズがお好きだった方にはお奨めである!


――あのチョコが食べたい文鳥


PS:ウンパ・ルンパを演じたインド人みたいな役者さん、どっかで観たことがあるんだけど誰だっけかなぁ…… あ~、思い出せない!


【捕捉】この雑記をUPした後、調べてみたら”ディープ・ロイ”という役者さんでした。

投稿者 mori-game

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