クリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』を観た。
原題:Flags of Our Fathers/監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド/製作:スティーブン・スピルバーグ、ロバート・ローレンツ/脚本:ポール・ハギス、ウィリアム・ブロイレス・Jr./原作:ジェームズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ/撮影:トム・スターン
出演:ライアン・フィリップ、アダム・ビーチ、ジェシー・ブラッドフォード、バリー・ペッパー、ジェイミー・ベル/2006年アメリカ映画/2時間12分/配給:ワーナー・ブラザース映画
で、感想――
クリント・イーストウッドらしい、抑制の効いた演出が観ている者の心を静かに感動させる良作だった。
話は、太平洋戦争も末期の硫黄島戦で、擂鉢山に星条旗を打ち立てた6人の兵士の写真の真実と、戦場から生き残り米本土に帰還した3人のその後の人生を描くというもの。
戦闘シーンはスピルバーグのAMBLINが絡んでいるので、まんま、『プライベイト・ライアン級』のすごさ。しかし、その凄さに依存することなく人間ドラマはきちんと描かれている(そこんとこが、プライベイト・ライアンと大きく違うところ)
詳しくはネタばれになるから書かないが、アメリカも『やらせ』をしてまでも国債で戦争資金をかせがないと、かなりヤバイ状況だったというところが興味深かった。あと、その『やらせ』に利用された三人の行く末と苦悩が『戦場における英雄とはなんだ?』という素朴な疑問を観ている者につきつける。
スタッフロールの時にながされる実際の硫黄島戦の写真が印象深い。あと、モデルのなった三人の兵士の写真も。
実は私、この作品を観ている間は特に目頭が熱くなるということはなかったのだが、スタッフロールが終了したあとの続編である『硫黄島からの手紙』の予告編を観た時に不覚にも涙してしまった。『なんで、こんなところで感動してんだ?』と自問自答してみるに、多分、それは日本側の目から見た続編の予告を観て、『戦争というものは両方の視点で観てみると、それぞれの正義があり、どちらが正しくて、どちらが悪いというわけではないはずなのに、若人達の血が流されなければならないのは、いったい何の為なんだ?』という常々考えていた『虚しさ』を思い出してしまったからだろう……と、思う。
しかし、お互い愛すべき家族や祖国を守る為に『正義と良心』に基づいて戦っているはずなのに、そのお互いの正義と良心を殺しあうという戦争とは、いったい『何もの』なんだ? 戦争は政治的な方法論だというが、私にはどうしても戦争は政治という『知的なメカニズム』で動いているのではなく、人間が持っている感情的な『獣のメカニズム』で動いているとしか思えない。もっとも、獣は戦争なんかやらないが……。
閑話休題。
良い作品です。お奨めです。