先週、更新の為に久々にTUTAYAに行きました。で、せっかく来たので久々になんか借りてゆくかと思い、おもしろそうな映画のタイトルを物色。なんかメジャー系は飽きたので、地味ながらも傑作がそろっているというミニシアター系のものをまとめて借りてみました。で、仕事の合間を見ながらチビチビと鑑賞しました。



■まず、最初は『ライフ・アクアティック


ライフ・アクアティック コレクターズ・エディション(初回限定生産)

ライフ・アクアティック コレクターズ・エディション(初回限定生産)



  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2005/09/21
  • メディア: DVD


TUTAYAのミニシアター系・人気ベスト3に入っていたので借りてみました。内容は――ビル・マーレイ演じるところの世界的に名の知れた海洋探検家にしてドキュメンタリー作家であるズィスーが、幻の怪魚“ジャガー・ザメ”の餌食となった仲間の仇を討つため、クセ者揃いの映像集団“チーム・ズィスー”を率いて海へと繰り出すというもの。ズィスーの子どもという三十男や、別れた妻、わけあり妊婦記者など、いろんな個性あるキャラ達が絡みながら淡々と進んでゆくというヒューマンドラマです。


で、感想――


なかなか小粋な良い作品でした。


意外だったのは、マイナーな映画とばかり思っていたら、ぜんぜんメジャーだったこと。だって主役はビル・マーレイ。脇役もジェフ・ゴールドブラム他、どこかで見たことがあるメジャー俳優ばっか。監督は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』のウェス・アンダーソンでした。


特に私が気に入ったところは、映画のいろんなところに登場する謎の海洋生物が、リアルな人間ドラマと不思議とマッチしてファンタジックな世界をつくりだしているところです。特に『電気クラゲ』には笑いました。後で知ったのですが、これらの不思議な海洋生物、私はてっきりすべてCGとばかり思っていたのですが、なんと! すべて人形アニメだったそうです。今時、手のこんだことをやります。(アニメはナイトメア・ビフォー・クリスマスに携わった方がやっておられました) ラストは私が今まで味わったことがないジンワリとくる感動がありました。ビル・マーレイ、最高です! 


 


■次は『アイ・アム・デビッド


アイ・アム・デビッド

アイ・アム・デビッド



  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2005/08/18
  • メディア: DVD


この映画の内容は――幼い時に家族と引き離され、強制収容所で育った12歳の少年が、ある日ついに脱走し、たった一人でブルガリアから母のいるデンマークへ向けて旅立ち、その過程で様々な経験を積む姿を描く……というもの。共演に『パッション』で鞭でバシバシうたれたイエス・キリスト役のジム・カヴィーゼルが出ております。


で、感想――


穏やかな感動のある良い作品でした。


私はこのての淡々と人間ドラマを描くロードムービーが大好きなのではまりました。私は、ロードムービーの良さって『決して派手なドラマもなく、かといって無駄なドラマもない、でもその中にこそ生きている喜びと感動が見出せるという、まるで人生の縮図のような展開』にあると思っています。最初は、収容所から脱出した少年の物語というのでかなり重い作品かと思いましたが、実際はその予想をはるかに裏切ったさわやかな展開でした。ラストシーンはシンプルですが、シンプルであるが故のおしきせのない良質な感動があります。


 


■次に『タッチ・オブ・スパイス


タッチ・オブ・スパイス DTSスペシャル・エディション

タッチ・オブ・スパイス DTSスペシャル・エディション



  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2005/09/16
  • メディア: DVD


なんでもギリシアではあの『タイタニック』に次ぐ第2位の興行成績を得たヒット作らしいです。内容は――1960年代、トルコのイスタンブールでスパイス店を営むおじいさんの家で育ったファニスは、屋根裏部屋で尊敬するおじいさんからスパイスの効用、天文学の話を聞き、引き込まれていきます。そんなある日、国際扮装の煽りでギリシャ人強制退去の命を受け一家はアテネへ移住。おじいさんと会えぬまま時は過ぎ、ファニスは料理の上手な子供から青年へ、そして天文学者へと成長していきます。そして、すっかり大人になったファニスにおじいさんから1本の電話があり、それから各々の忘れ去った過去を取り戻す人間ドラマが始まるというものです。


で、感想――


奥の深い良質のヒューマンドラマでした。


スパイス職人のおじいさんがファニスに、宇宙、人間、人生、世のすべてのものをスパイスに絡めて語る哲学はなかなかおもしろかったです。この映画、観ていてなんかの映画に似ているなぁ……と思っていたら、思い出しました。『ニュー・シネマ・パラダイス』です。『ニュー・シネマ・パラダイス』が”映画”というものをキーワードに人生を語るところと、『タッチ・オブ・スパイス』が”スパイス”をキーワードに人生を語るところがよく似ています。そして、どちらの作品も主人公が”おじいさん”の思い出から卒業して新たな人生を築き始めるところなんかよく似ています。ラストシーンはなかなかロマンチックでステキでした。


 


■最後にこれはミニシアター系というより名作の『地下鉄のザジ


地下鉄のザジ

地下鉄のザジ



  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 1999/11/17
  • メディア: DVD


この作品は、このBLOGによく遊びにきていただいている、ライターの”さいさい@百鬼”さんから薦められて観たものです。


内容は――母親に新しい恋人ができて母親が逢瀬を楽しむ間、おじさん(フィリップ・ノワレ)に預けられたザシ。 パリの地下鉄に乗るのを楽しみにしていたザジだが、あいにくのストライキ。 機嫌を損ねたザジはパリの街へ飛び出す。ザジの目の前に繰り広げられるのは大都会パリの奇妙な光景と滑稽な大人たちの姿が繰り広げられる……というものです。監督はあのヌーベルバーグの旗手、『死刑台のエレベーター』のルイ・マル監督。


で、感想――


いやはやたまげた! という感じでした。


私はこの『地下鉄のザジ』を、『灰とダイヤモンド』のようなネオ・リアリズム風の硬派な社会派の映画だとズ~ッと思っていました。(結構、そういう人多いみたいですね) で、観て驚きました。実はシュールなスラップスティクコメディーだったのです。なんでもアンチ・ハリウッド精神から生まれた「あえて映画作法を壊す」というポリシーの作品だそうな。この作品、ストーリーはあってないようなものなので、正直言って物語の内容はよく分かりませんでした。でも、表現方法は無視できないものがあります。というのも、現代の”ぶっとび系・コメディー作品”で使われている手法を、既に1960年に作られたこの作品の中でほとんどやっていたからです。つまり、この映画、今風のコメディータッチの作品のお手本にもなっているのです。これには驚いた。同時にルイ・マル監督の想像力と実験精神に感服しました。私のお気に入りの作品『下妻物語』や『アメリ』の監督さんも既にザジの洗礼を受けているのかもしれません。温故知新をいう言葉の重さをヒシヒシと感じます。


――以上、先週から観続けたミニシアター系の作品でした。いやぁ、どれも良い作品ばかりでした。ミニシアター系の映画に”はまる”と病みつきになりそうです。お時間のある方、ミニシアター系、お奨めですよ。ただし! 仕事を終えた後の深夜にはあまり観ないほうがよいかと。と、いうのも、これらの作品、人間をじっくりと描いているものが多く、そのせいかテンポもゆっくりしているので、眠くなってしまう危険性があるからです(笑)


 


【追記】『地下鉄のザジ』でおじさん役をやったフィリップ・ノワレは、後に『ニュー・シネマ・パラダイス』のアルフレード役を演じた俳優さんでした。なんか昔から子ども相手に良い演技をする役者さんだなぁ。

投稿者 mori-game

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