私は某ゲームスクールにてプランニングの講師なるもをやらせていただいております。『プランニングって何を教えるの? 大ヒットするゲームアイデアの作り方?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら私は『ヒットゲーム』の作り方なんて知りません。そんなものがわかっていたら私は今までにヒットゲームを乱発して大もうけし、業界をさっさと引退して何処かのリゾートで悠悠自適な生活をエンジョイしているはずです(笑)。



私が教えているのは『基礎的な技術』です。それも『考え方』という技術です。ゲーム作りの方法論はメーカーによって異なります。ですから一部の会社でしか通用しない方法論を教えても生徒達が就職後にとまどうだけでしょう。そうならない為にも、また、どんなメーカーの方法論でも少しでも早く理解し、受け入れられる頭にするために『ものをつくる為に必要な基礎的な考え方』を教えています。これはゲームに限らずどんな業種にも通用するものと自信をもっております。てゆーか、この程度のものって『ものつくり』にとっては基礎中の基礎なんですけど、その基礎ができていない生徒があまりに多いのにはちょっと驚きます。現在の義務教育における創造教育(美術・音楽・ものつくり等)に対して、国がいかに力をいれていないかを思い知るようです。『さらば!技術大国日本』 『さらば!ものつくりの国、日本』みたいな心境です(苦笑)。


しかし、一部の生徒の中には『その程度のことぐらい知ってるよ! もっと実践的なこと教えろよ!』と不満を持つ者もいるかもしれません。でも、私は『知っていることと理解していることは別の問題。まず、自分の体で理解してみよう』という方針のもとに、あえて、基礎的な考え方を理解させる為の実習をコツコツ、コツコツとやらせています。そのコツコツとした地味で基礎的な実習の積み重ね自体が、実はプロの現場での『実践的なこと』に繋がってゆくと私は確信しています。プロの現場では中学生や高校生のゲームオタクでも知っているようなゲームの知識なんて何のやくにもたちません。それより社会人としてのマナーや考え方、また、ゲームというエンターテイメント商品を制作するための考え方の基礎がしっかりしている人の方が好まれます。


スクールの授業ではほとんど欠席せず、講師側が教える基礎を大切にしながらコツコツと学んでいる生徒達が大勢います。ほとんどの生徒達は気づいていないでしょうが、実は自分の道を切り開くのは授業の成績だけではなく、そういう『コツコツとやっていける能力』なのです。プロの制作現場は外から見たイメージとは大きく異なり、仕事内容、人間関係問わず、地味でしんどいことの連続です。それも長期戦で。業界の表面的な華やかさだけを期待して運良く業界に入れても『コツコツとやっていける能力』がない者はあっという間に挫折するでしょう。


3学期(スクールではTerm3といいます)に入って、生徒の出席率が極端に落ちてきました。スクール側に聞けば毎年この次期になるとどこの授業もこんな調子らしいです。私は初めての体験なので正直驚きました。そして同時に『なんて、もったいないことをするのだろう』という残念な気持ちを抑えることができませんでした。もちろん、来ない生徒からすれば『授業はつまらないし、役にたちそうもないから、ぜんぜんもったいなくなんかねーよ!』という理由もあるのでしょう。でも、私がもったいないというのはそういう基準からのものではなく、せっかく『コツコツとやっていける能力を磨けるチャンス』があるのに、それを自ら放棄してしまっていること自体なのです。


私は講師である以前に、業界でいろんな優秀な人間と仕事をやっているプロでもあります。ですから、講師としての私ではなく、プロとしての私の目から生徒を観た時、『業界で通用する生徒と、通用しない生徒』が100%…とはいわないまでも90%はわかります。


はっきり言いましょう――。


現場では『中途半端なゲーム知識を持っている人間』は欲しがっていません。(言わんや『ゲームオタク』をや、です)。 『仕事をきちんと理解して、きちんとやってくれる社会人』を欲しがっている――ただ、それだけです。実践の技術は仕事をやっていれば後からついてくると現場では考えています。(即戦の現場では異なりますが) つまり、普通の企業となんらかわることはないのです。ゲーム業界は別に特殊な業界ではないのです。だからこそ私はスクールでは基礎(考え方)の大切さと、コツコツとがんばることの大切さを学んでいって欲しいとつい力説してしまうのです。


先をあせって、表面的な就職技術をマスターしても良い結果はでません。そんなものは直ぐ見抜かれます。ましてや大きな企業になればなるほど。プロの目は節穴ではないのです。(仮に運良くはいれても本人が苦しむでしょう)


――なんて、たかだか業界に長くいただけのオヤジが偉そうに言っていますが、私も若い頃、自分の能力にうぬぼれ『基礎的なこと』を大切にせず目先のことばかり追って失敗したことがありました。今思うに、正直、愚かでした。だからこそスクールで学ぶ生徒達には同じ失敗をしてほしくない。私も一応普通の人間ですから、目の前にある崖に気づかないで走ってゆく生徒に向かって『おい! 崖だぞ!』と教えてあげたい――ただ、それだけの思いで言っているだけです。


でも、こんなオヤジの老婆心とは関係なく、これからも若い人達は同じような失敗を繰り返してゆくんでしょうねぇ……。でも、それだからこそ人生なんでしょうねぇ……。某超有名アニメ監督の弁ではないけど、『若者には失敗する権利があってもいいはずだ』というのもありますからね。


あ、最後の最後でフォローになってないか……(苦笑)


 


【追記】あ~っ! ソネブロ重過ぎ! イライラするなぁ! 遊びにきてくれた方々、すみませんね~…

投稿者 mori-game

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