桂吉弥さんの『桂吉弥の冬景色』と題する落語会をP-MEDIAのO野さん達と一緒に観る(聞く?)。吉弥さんの落語に行くのは春の深川での独演会以来これで二度目だ。(夏もあったが仕事でいけなかった…残念) 今回の会場は『お江戸日本橋亭』という銀座三越の直ぐ近く。百人入るか入らないかぐらいの小さな会場でまるで公民館の一室のようだった。
*桂紅雀さんは吉弥さんの前座でした。
吉弥さんがNHKの『新選組!』で山崎烝役を演じたせいか、立ち見が出るほど満員の会場の客のほとんどが若い女性達だった。開場は狭いのもあって演じる吉弥さんと客の間に距離がなく、その距離感が今までにない親しみ易いライブ感を醸し出していた。私はこういう『目の前で生身の人間が演じている』と感じさせるライブが大好きだ。(昔は全部こんなんだったんだろうなぁ…)
今回の出し物は『池田の猪買い』と『かぜうどん』。その話の前にちょっと挟む吉弥さんの世間話(枕というらしい)がとてもおもしろい。本人が体験した日常の何気ない出来事をおもしろおかしく話すのを聞きながら『話芸って表現力もさることながら、日常の洞察力も大切なんだなぁ…』なんて思ってしまう。
*写真はパンフレットより
吉弥さんの話が始まる――。 舞台には、あるはずもない世界と、居るはずもない愉快な人間達が突然現れて滑稽な人間模様を繰り広げる。吉弥さんは上方落語家なので江戸のそれと違って元気がいい。だから聞いているこちらの方までそのパワーが伝わってきて、そのパワーが『見えない人間達』の像のピントをよりいっそうハッキリと合わせてくれる。まさにアナログなバーチャル空間!デジタルなんかにゃ負けちゃいやせんぜ、旦那!(笑)
『落語』はおもしろい。聞き手の想像力をビンビンと刺激させる。最低限の知識(江戸時代の生活文化とか)がないと楽しめないのでは? と未体験の人は案ずる必要はない。落語は時代に関係ない『普通の人間たちの暖かさ(ぬくさ)』を描いている。高尚な芸術も良いが、『何気ない日常生活の中からでも人間のおもしろさを見つける事は出来る』ということを楽しく教えてくれる落語もなかなか奥深い。
話は変わるが、こういう舞台や演劇の客は圧倒的に女性が多いような気がする。たぶん役者に対するファン心理がその要因のほとんどかもしれないが、実はこういう文化を縁の下で支えているのはそのような世の女性達かも知れない。 ――なんて、会場を見回しながらふと思ってしまった。
落語にまだ一度も行ったことがない、そこのあなた。是非、一度行ってみられては? 今までにない『楽しさ』を発見できますよ。(行くなら吉弥さん、お奨めですよ)
――千疋屋の『一個315円のみかん』が食べてみたい文鳥(落語に行った人しかわからないネタ)