ティム・バートンの『コープスブライド』を観た。
で、感想――
いやぁ~、良かった! 『帰ってきた、あのティム・バートン!』という感じか。 しかし、まさかこの歳になって人形アニメでウルウルするとは思ってもみなかった。
ストーリーはいたってシンプル。主人公の青年ビクター(声は例によってジョニー・デップ)はちょっとした手違いで死体の花嫁(コープスブライド)と契りを交わしてしまった。それを知ったビクターの本物のフィアンセは驚愕! そして……と、これ以上書いてしまうと、あっという間にネタばれになってしまうぐらいの内容だ。しかし、この作品。シンプルなストーリー、且つ、それほど長くない上映時間(77分)の割には中身が濃い。
まず、ストップモーションアニメの豊かで緻密な表現力。CGが全盛なご時世においてあえて人形アニメ。それもアニメ職人さんが10年近くかけコツコツ、コツコツと心こ込めて仕上げております。まさに匠の技。そこにはCGというコンピュータが計算して作った擬似世界では絶対表現できない『本物の光と質感が創る味のある世界』と、そしてモーションキャプチャーでも使ったのか?と勘違いしてしまう程の滑らかな人形達の動きが作り出す生き生きとした生命感が画面いっぱいに存在している。(ピアノを弾くシーンの指の動きは秀逸!)
そしてキャラクター。正直言うと、私はこの作品を鑑賞するまでは、あのコープスブライトのキャラデザインがあまり好きになれなかった。ところが観てみてビックリ! その魅力的な表情やしぐさに二次元オタクではないが、思わず惚れてしまいそうになった(危ね~危ね~) 流石、元ディズニーのティム・バートン。そこら辺りのこだわりは天下一品だ。(私は株式会社としてのディズニーは偽善的で否定的だが、現場で純粋に創作している作家さんに対しては肯定的だ) その他のキャラも魅力的だった。ここにもバートン節は健在で、死後の世界のグロな住人達にも優しい愛情が注げられていた。
物語の顛末は観る人によっていろいろ感想が分かれるかもしれない。でも、私の場合は非常に好意的である。て、ゆ~か、ラストシーンはこの雑記の冒頭に書いた様にウルウル状態になってしまった。ああいうエンディングは私が一番好きなパターンなので……(観た人はどのシーンかわかりますよね)
まだ観ていない方。この作品、絶対にお奨め! 特にカップルには。真の愛とは何かを優しく説教臭くなく考えさせてくれる。まさに大人の為のファンタジー。ちなみにスタッフロールが終わり場内が明るくなっても、まだ感動に酔いしれ座席に座ったままのカップルが結構いたことを付け加えておく。
――世の日陰で生きている者達に対するバートンの愛情は、いったい何処から来ているのかが気になる文鳥
【追記】書いていてフト気づいた。『まてよ! もしかしたら中島哲也監督はティム・バートンを意識してるのかな? 世の中から外れた異端、弱者、欠陥人間に愛情をよせているみたいだし……』