故郷の弟から今年も『友情の梨』が送られてきた。 弟よ。いつもスマンの~…
梨の上に置いてある青いサインペンを見ていただきたい。デカイでしょ? 梨。 この梨は熊本県特産の『荒尾梨』という超特大の梨だ。えてしてデカイ食い物は味が淡白なものが多いと相場が決まっているのだが、この梨に限ってはそれは当てはまらない。蜜たっぷりで、超~甘~なのだ。
さて、冒頭に書いた『友情の梨』の所以だが――
弟が大学生の頃の話。当時、弟には実家が梨園を営んでいる友人がいた。卒業間際の4年生の秋、九州に大型の台風が上陸し弟の友人の実家の梨園が大損害を受けた。梨の殆んどが木から落ちてしまい商品として市場へ出荷できなくなったのだ。困り果てた友人とその一家を少しでも助けてあげようと思った弟は熊本の友人宅へ赴き、落ちた梨をトラックに積み行商しながら売りさばく手伝いをしてあげたのだ。(梨は商品価値は下がったものの、十分に食べられるものだった)
梨は元々品質の良いものだったので直ぐに売り切れた。友人の実家は辛うじて最悪の事態を免れことができたのだ。弟の友情に恩義感じた友人はその時のお礼の気持ちを込めて、それから毎年、弟の元へ梨を送るようになったそうだ。そして、そのおすそ分けを毎年私もいただいているという次第だ。ちなみに、『友情の梨』というセンチな名前は私が勝手に名づけたものだ。 さてさて、今年の『友情の梨』の味や如何に……?
『甘い! うまい!』
味は例年のように今年も期待を裏切らないおいしいものだった。まるで弟と友人の永遠の友情のように。
――梨食って秋思う文鳥