先日のこと。いつもの昼休みの散歩を新宿方面ではなく、四谷方面に変えてみた。新宿通りと外苑通りの交差点に差し掛かった時、屋上に赤いヘリコプターがレイアウトされたビルを発見。なんだろ?と興味津々にそのビルに近づいてみると、入り口の自動ドアに『消防博物館』と書かれてあった。
入ってみた。受け付けにいた妙に生真面目な年配の女性から、エレベータに乗って5階から順に下って観てくれと言われた。
5階は『江戸の火消し』というテーマの施設で、火消しの誕生、発展を錦絵や資料で分かり易く説明していた。特に江戸の街並みのミニチュアと映像がシンクロした『破壊消防』の説明はなかなか凝っていておもしろい。
当時、江戸で使われていた火消しの組みの『まとい』の模型。よく観たら『へ組み』がなかった。『屁』みたいでかっこ悪いからないのかな?とその時は思ったが後で調べたら『へ』は『百』という感じで代用されてあったようだ。『百(へ)組み』ね。
3階は『現代の消防』のコーナーだったが、ここで目立ったのは、子供たちに少しでも分かり易く説明するために『テレビゲームの方法論を使った遊んで学ぶ』という方法論だった。ゲーム内容はプロの私から観れば稚拙なものだったが、文章でただ説明されるよりはよっぽど学習効果があるだろう。(シリアスゲームは博物館から発展してゆくかもなぁ……)
あと、とくに気に入ったのは写真のセットだが、これがメチャクチャこっていて面白かった。ざっと説明すると、おもちゃ風デザインの家がならぶ街のジオラマがあり、その家の部屋にあたる部分に小さなビデオディプレイがはめ込まれている。ジオラマの上部にはメインストーリーを説明する大きめのディスプレイがあり、さらに天井には数十個のライトが設置されている。
手前のボタンを押すとイベントが始まる。火事発生までの過程を各家のディスプレイにアニメで表示される。そして、消防隊出動。ジオラマの中にある消防署から模型の消防車や救急車が登場し、目的の家まで走ってゆく。それにシンクロしながら家の状況や、ジオラマの小物、そして天井のライトがコンピュータ制御でオートマチックに演出しながら消火活動の様子を分かり易く展開してゆく――というもの。
職業柄と個人的な趣味のせいか、最後まで見入ってしまった。(中年のオヤジがこんな子供向けのモノをひとりでニヤニヤして見入っている姿は傍から見たら不気味だったかもな(苦笑)) メカトロニクス、コンピュータ、アニメ、まさにマルチメディアを駆使した贅沢な施設で、見た目の子供っぽさとテクノロジーのギャップがなんともいえません。さぞや金がかかったことであろう。
ただ、ちょっと残念なことがあった。私が観終わった後、5~6歳の幼児とその若い母親が観に来たのだが、幼児のほうは直感的におもしろさを感じてその施設を見たがっていたのに、母親は、そのおもちゃっぽさに偏見をもったのか、『あちらの方がいいから、あっちへゆきましょう!』と言って、とくにおもしろくもない『いかにも博物館っぽい展示物』の方へ子供を連れていったのだ。私は子どもの反応が観てみたかったのだが……。
しかし、あれだなぁ……。私はシリアスゲームの可能性を信じているけど、この一件でちょっと思ったのは、シリアスゲームという新しい教育技術に対する最大の敵は『頭の固い大人の偏見』なのかもなぁということか。『教育は真面目なものであって、楽しいものであってはならない』、みたいな……。
1階と地下に展示されていた消防自動車やヘリ。素直に観て、消防自動車ってかわいいと思いました。