『スパルタァァァ――ッ!!』
と叫んだ後、兵士を穴に蹴落とす強烈なCMが個人的に気にいっている映画『300(スリー・ハンドレッド)』を観てきた。
監督:ザック・スナイダー/脚本:カート・ジョンスタッド、マイケル・B・ゴードン、ザック・スナイダー/原作:フランク・ミラー、リン・バーレイ/撮影:ラリー・フォン/音楽:タイラー・ベイツ/出演:ジェラルド・バトラー、レナ・ハーディ、ドミニク・ウエスト、デビッド・ウェンハム、ロドリゴ・サントロ/2007年アメリカ映画 /1時間57分/配給:ワーナー・ブラザース映画
で、感想――
私は今だかって、このように雄雄しく、累々たる屍や血を美しく描いた映画は観たことがない。いやぁ、実におもしろかった!
原作は『シン・シティ』でお馴染みのフランク・ミラー。『300』も『シン・シティ』と同じく原作画のイメージを再現するかのような計算された独特の映像美が印象深い。特にラストのスパルタ兵達の***のカットは、まるで宗教画をみるような美しさで思わず唸ってしまった。
戦闘シーンも、兵士全員がまるでマッチョな座頭市みたいな殺陣で敵兵をバッタバッタとなぎ倒してゆく。それに早回しやコマ落としを巧みに使ったスピード感あふれる映像処理と、良い意味でわざとらしい血しぶきが、独特の映像美とカタルシスつくり出している。だからかなりグロなはずのシーンも、その映像美の効果で少しも残酷に感じない。
とにかく、この作品、アメコミがもつ『絵で語ることのおもしろさ』を、そのまま実写に置き換えることに成功しているように思える。日本でも漫画を実写化した作品はあるが、それはあくまで『原作の設定を実写にした』だけであって、『300』のように『原作の本質を実写にした』ものではない。そこが大きな違いだろう……って、比較すること自体が虚しく感じるが。
物語もエンターテイメントの鉄則どおり、余計なものは潔く斬り捨て『とてもわかりやすいもの』になっている。300人のスパルタ兵達が数十万のペルシア軍の攻撃に立ち向かい、そして***してしまうというもの。小学生にも分かる内容だ。(ただR15なので小学生も中学生も見れませんが)
あと『シン・シティー』もそうだったが、今回の作品にも何故かクリーチャーのようなフリークスが出てきたり、忍者のようなわけ分からん兵士や、怪獣のようにでかい像(こいつの顛末には笑った)が出てきたり、やたらと瞳の大きい漫画っぽいコスチュームのペルシアの王が出てきたりと、そのバラエティーに富んだ良い意味でのウソ臭いというか漫画っぽいキャラも創造力をくすぐり楽しめる。
――って、なんかベタ誉めだが、私はこういう『新しい映像』がツボにはまるタイプなので仕方がない。でも、映像よりも歴史や深い人間ドラマが好きだという方々、もしくはバイオレンス表現がシャレで見れない、血がダメだという方々には楽しめないかもね。
『シン・シティー』はその設定が客を選ぶ作品だったが、今回の『300』は誰もが楽しめるエンターテイメントとなっているのでお奨めです。
写真は『オペラ座の怪人』に出演したころのジェラルド・バトラー。『300』とは、えれぇ~雰囲気が違いますな。