「利益優先主義の論理が幅をきかし始めたゲーム業界において、今だ”モノ創りの誠意”を忘れずに信念を持って良質なモノを創ろうする人がいるのだなぁ…」 昨日、久々にお会いしたキャメロットの高橋さんと話しながら私はそう思った。

私は、ゲーム、アニメ、映画、漫画、小説等のメディアは”作者の想像力を売る商売”だと思っている。それも、ユーザー(客)を『ほほぉ!』と驚かせ、心をワクワクさせ、そしてしばし現実を忘れさせることが出来るような特殊な想像力を売る商売だ。その特殊な想像力があるからこそ客から”金”が取れると思っている。そして、そのような作品を創る為には、常に誠意を持って己の作品とそれを期待してくれる客から目をそらさず、想像力をフル回転させて脳みそから汗をダラダラと流さなければならない。 ”脳みそから汗を流す”――正直、大変な作業だ。ヘタするとノイローゼになったり、頭がハゲたり? 自律神経がおかしくなって体を壊すかもしれない。でも、それが”モノ創り(クリエイター)”という職業の誠意だと思っている。

”想像”と”インスピレーション”は違う。”想像”は知識を意識的に再結合させて”新たな概念”を産む論理的作業であり、”インスピレーション”は知識を無意識に再結合させて”新たな概念”を産む非論理的作業だと思う。はっきりいってインスピレーションなんかそうそうわくものではないし使えるものでもない。必然的にプロはそのような”霊感”にいちいち頼っていては仕事にならないので、想像という現実的な論理作業を用いる。つまり脳みそから汗を流す。ところが意外なことに、業界に中にはそのような作業を面倒くさがるプロが結構多いことに驚かされる。必然的に彼らは安易な方法を見つけようとする。その典型的な例は、目的を喪失したマーケティング理論で企画を決め付けたり、有名人の感性や才能という霊感的能力を盲信してゲーム制作を委ねるというものだ。そんな方法を錦の御旗にして作品創りをする連中に幅をきかせられては、いい作品が生まれるわけはないし、業界にとっても、また業界をめざす若者達にとってもいい迷惑だ。

私は高橋さんと話しながら、モノ創りの誠意とは結局、”脳みそから汗を流す”…つまり、”本質を見極め、考えぬくこと”で、その考えぬく能力を更に高めてゆく為に日々コツコツと勉強して努力することだと思った。正直、実に地味な積み重ねだ。ともすれば華々しいイメージのみが先行する業界だが、実は一線で活躍するクリエイターの殆どがこのような地味な作業をコツコツと積み重ねていると私は確信している。それは、数々の良質なゲームを世に出し続けている高橋さん、つまりキャメロットさんを見ていてもわかるし、今まで私がお付き合いさせていただいた一流の小説家、音楽家、アニメ監督、漫画家…を見てもわかることだ。

高橋さんと話をした後、弟の秀五さん、そして、もう一人の高橋兄弟?の宇野さん達から食事にお招きいただいた。(私はキャメロットさんを訪問する度にご馳走になっている。いつも、ありがとうございます…) 食事をしながら明るく朗らかに談笑する高橋兄弟と宇野さんを見ながら、私は、キャメロットさんが良質なゲームを常に発表できるのは、並々ならぬ信念や技術もさることながら”モノを創ることの夢”を信じて疑わないその素直なパーソナリティーにも理由があるのだろうと思った。

マリオテニスアドバンス

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  • 出版社/メーカー: 任天堂
  • 発売日: 2005/09/13
  • メディア: ビデオゲーム

投稿者 mori-game

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