アニメ版『時をかける少女』のDVDが出たので観てみた。なんでも、作品の評価が高く、去年いろんな賞を総なめにしたそうだ。


 監督 細田守 /製作 角川書店/マッドハウス /脚本 奥寺佐渡子 /キャラクターデザイン:貞本義行/美術監督:山本二三/音楽:吉田潔/主題歌:奥華子/出演者 仲里依紗 石田卓也 板倉光隆 原沙知絵 谷村美月 垣内彩未 関戸優希 /配給 角川ヘラルド映画 /公開 2006年7月15日


 で、感想――。



良質な作品だった。非常に丁寧に作られていて、画面から伝わってくる監督の『人を描くということに対する真摯な姿勢』に好感を得た。ところで『人を描く』といえば、日テレお気に入りの某有名アニメ会社の”おはこ”であったはずだが、去年の作品(作品名は言わずもがな)を観る限りでは、圧倒的にこの『時かけ』に軍配が上がったと思っている。て、ゆーか、こっちのほうが『一般客があの有名会社に期待し続けてきた何か』を素直に受け継いで、現代の若者の感性で花開かせているんじゃないの? (なんか、その昔、あの会社の若手が作り、御大監督に酷評されつつも名作の誉れ高い『海がきこえる』を連想してしまった)


物語は筒井康隆原作の続編的位置付けとなるオリジナルだが、決して原作の持ち味を壊していない。いや、見事な現代風のアレンジともいえよう。主人公も原作と違って現代風の元気の良い女子高生になっていたが、その描き方も安っぽいアニメにありがちな形式的さはなく、自然で嫌味がない。(【追記】脚本の奥寺佐渡子は故:相米慎二監督の『お引越し』や『学校の怪談』シリーズを手がけてきた実写畑のベテランだ。どうりでアニメ畑の脚本とちがってうまいはずだ……)


しかし、何が一番すばらしいって、私は山本ニ三氏が描く美術のすばらしさにはえらく心を奪われた。まぶしい、青い、そして空気がすんでいる。そう、あれは夏の心象風景だ。そういえば青春時代(13~17歳限定)の心象風景って何故か夏だったんだよなぁ。自分の場合は。あの夏の青空の入道雲のように、情熱や想いを一気に天へ向かって馳せさせ、それだけのために汗をかいている。そして、夏の美しい夕焼けのように失望や挫折の色を交えながらたそがれてゆく。でも、そのたそがれの後には満天の星達が希望の光を瞬かせる――。そんなイメージが、自分の青春の日々と夏とをオーバーラップさせるんだよなぁ。この作品は人間が演じる物語もさることながら、山本氏が描く『夏』がもうひとつの物語を語っているのかもしれない。仮にあの作品が夏以外の季節で描かれていたなら、また違った作品になったのかもしれないな。



あ、夏といえば思い出した。私のお気に入りである中島哲也監督作品の『下妻物語』も、夏が舞台だったな。真夏の茨城の田園背景を覆う真っ青な青空と入道雲。そうか、あの作品を観終わった後私が感じる、あのなんとも言えない甘酸っぱい気持ちは、あの作品の夏の風景に隠された青春のイメージがそうさせたかもしれないな。ならば、私があの作品を何度も観ているのは、あの夏の日に心をタイムリープさせたかったという意識がそうさせているのかもしれない。(特に最近、逃げも隠れもできない本格的なおやじになってしまったので、その意識は通常の3倍かもしれん)


そうか、わかった。『時をかける少女』という作品が何故あんなに評価が高かったのか、その理由のひとつが。それは、実はタイムリープしているのは劇中の主人公だけではなく、それを観ている観客もタイムリープしていた、いや、作品時代がそうさせていたからなんだろう。観客それぞれが持つ、あの短い青春という名の夏の日々――楽しい思い出、つらかった思い出、その他諸々の思い出を丸ごと飲み込んでひたすら光り輝いていた、あの真っ青な青空と入道雲の下にあった日々に向かって。


なんか、映画の感想というより、夏と青春についてのポエムな感想になってしまいましたな……。まぁ、いつもこんな調子でわけわからんですわ。


 


【追記1】監督の細田氏って、某有名アニメ会社の『ハ*ルの動かざるごと山の如し城』(冗談)の監督をやる予定だったんだけど、何故か降ろされて御大アニメ監督に変更になったのは有名な話し。もし、細田監督がやっていたなら、あの作品もあんな陳腐な恋愛表現にならなかったろうに……。悔やまれます。(ただ映像のダイナミズムは御大の方が一枚上手っぽいけど) 


【追記2】奥華子いいね。作品のイメージにぴったりです。(また街頭ライブに来てくんないかな)


時をかける少女 通常版

時をかける少女 通常版



  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2007/04/20
  • メディア: DVD


ガーネット




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  • アーティスト: 奥華子, 佐藤準
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2006/07/12
  • メディア: CD


投稿者 mori-game

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