書店でおもしろそうな本を見つけたので購入した。
イギリスの児童文学作家・故ローバート・ウェストール氏による作品で、そのすばらしさに感銘したアニメ作家・宮崎駿氏自らの『解説文』ならぬ『解説漫画』つきの本だ。
で、感想―
『すごいっ! こういう児童文学もありなのかっ!』
本は『ブラッカムの爆撃機』『チャス・マッギルの幽霊』『ぼくを作ったもの』の短編3作が収められているが、特に『ブラッカムの爆撃機』は『こういう児童文学もありなのか!』と思わせるほど驚き、感動できる内容だった。
ブラッカム~は、第2次世界大戦下、イギリス空軍の爆撃部隊で『ウィムピー(ウェリントン爆撃機の愛称)』に乗る兵士達が遭遇した不可思議な出来事を描いた作品だ。詳しい内容はここでは書かないが、とにかく驚くのは爆撃機内のディティールと搭乗兵士達の描写力のすごさだ。(そのすごさについては宮崎氏も解説漫画の中で書いている) でも、この作品は大人向けの戦争小説なんかじゃない。あくまで児童向けの小説だ。なのに、そこまで書くか?と思わせるほど戦争下の人間達を『描ききっている』のだ。まるで自分の体験記のように。
どうやら・ローバート・ウェストール氏は『相手が子供だから、もっとマイルドに……』という意識は少ないようだ。作家として、いやひとりの人間として『子どもという人間に伝えるべきことは真摯伝えよう』という気持ちが文面から伝わってくる。
どうして、このような作品が書けるんだろう?――読みながら私はこの作家に興味を持った。そして、そのヒントは本の最後の解説文に書かれていた。(以下、引用)
ウェストール氏は最も子どもたちを気づかった小説家であり、芸術的な職業にたずさわる者としての独自の『教師くささ』を持ち続けた作家だった。自分のまわりの世界と、その世界に入ってくるチャシャーの生徒たちを見つめて。この子たちにはフィクションが必要だと彼は感じた。殺菌され無菌化された政治倫理のルールブックとしてではなく、この世を生き抜くためのサバイバルキットとして役立つフィクションが必要だと。
『どうしたら子どもたちに、希望を裏切ることなく真実を伝えられるだろう?』
と彼は自問した。
う~む。共感するなぁ……。氏は子供達に必要なものは『真実』と『希望』であり、それがあるからこそ社会を生き抜いてゆく『知恵』が育ってゆくのだと考えているのだろうと私は解釈した。で、そう解釈すると宮崎氏がウェストール氏に共感できるのも分かるような気がする。何故なら宮崎氏の一連のファンタジーにもウェストール氏の考えと共通するところが多々感じられるからだ。いや、似たもの同士の共鳴と言った方が明快か。
まぁ、理屈はともかく、とにかくおもしろいので興味のある方は秋の夜長に一読されては? 短編なので一晩で読めますよ。
【追記】なんか日本にもウェストール氏のような考えをもった教師兼、児童文学作家がいたよなぁ……と考えていたら、思い出した! そうそう!灰谷健次郎氏でした。(ファンタジーじゃないけどね)