宮崎駿氏や高畑勲氏をアニメーションへ誘ったというポール・グリモー監督の『王と鳥』(「やぶにらみの暴君」改作)のDVDを購入し鑑賞する。
で、感想――
なんと! 1953年の作品だというのに、いたるところに『ルパン3世・カリオストロの城』のオマージュが! ――いや、逆、逆……。宮崎監督がこの作品にいかに影響を受けたかが垣間見れるシーンの連続でした。(特に、城の天辺にある王の部屋。ありゃ完全にパクって……いや、オマージュしてクラリスの部屋のデザインのヒントにされたのではと推測されます)
『王と鳥』の中で出てくる王の部屋
クラリスが閉じ込められた部屋
話しのテンポは、今のアニメと違ってかな~りノンビリしているが、そのアニメのクオリティーとアイデアの独創性は今観ても驚嘆に値するものがある。なんでもこの作品、1942年にアニメ監督のポール・グリモーと、脚本家のジャック・プレヴェールがアンデルセンの童話『羊飼い娘と煙突掃除人』を原作にアニメ化していたものらしいが、制作に時間がかかりすぎ予算も底をついた為、痺れを切らしたプロデューサーが二人を制作から外し、他のスタッフに無理やり辻褄が合うように作らせ、1952年に『やぶにらみの暴君』というタイトルで発表したといういわくつきの作品らしい。
で、グリモーとプレヴェールの意に沿わない形で世に出たこの作品、意外やその評価は高く、多くの国で公開され、世界中のアニメーション作家たちに大きな影響を与えたそうだ。日本でも1955年に公開され、若き日の宮崎駿氏、高畑勲氏、その他の著名な文化人達に大きな影響を与えたカリスマ的作品になったらしい。その後1967年、『やぶにらみの暴君』にどうにも納得できないグリモーは、作品の権利とネガフィルムを買い取り、プレヴェールと伴に自分達の納得ゆく作品にするため作品タイトルを『王と鳥』と改め、1979年に新たな作品として完成させたそうだ。
私は『やぶにらみの暴君』は観ていないので、両作品の違いが分からないが、DVDの解説によると、前者は『解放された人々が未来に向かって歩み始める』という分かり易いエンディングで、後者は『抑圧からの解放』を意味させる観念的なエンディングとなっているそうだ。両作品とも、各々の作品が完成した時代の社会背景の影響が出ているというところか。
ところで、この作品の城の美術(背景画)の一部だが、私は、なんとなく『キリコ』の絵画を連想してしまった。まさか、アニメの中にキリコのオマージュをしたんじゃないよなぁ……? (そんなわきゃないか)
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