60年代後期から70年代前期の若者達の青春漫画を描かせたら右に出るものはいなかった漫画家の故永島慎二氏(享年67歳)の名作『若者たち』が映画化されるそうだ。映画のタイトル名は『黄色い涙』。氏の作品のシリーズ名からとったようだ。
原作の『若者たち』は70年前期、東京の阿佐ヶ谷に住む売れない漫画家村岡実の元に集まった5人の若者たちのそれぞれの夢、希望、挫折の物語を描いている。ある者は漫画家に、ある者は作家に、そしてある者はミュージシャンになることを夢見て……。しかし、その夢のほとんどは達成されることなく、まさに黄色い涙とともに消え去ってゆく――と、書くとなんか暗い物語を想像させるかもしれないが、実はそうではなく明るく前向きな青春賛歌の物語だ。
舞台となる阿佐ヶ谷は故永島氏が住んでいた街で、実際、60年代から70年代のこの街には漫画に出てくるような夢をもった多くの若者たちで溢れていたそうだ。
25年前。私はイラストの仕事がしたくて先輩を頼って上京した。その先輩は永島氏の大ファンで氏が住む阿佐ヶ谷をわざわざ選んで住んでいたぐらいだ。当然ながら、私が上京して初めて住んだ街は阿佐ヶ谷だった。当時の先輩と私は金がなく先も見えない生活をしていたが、『夢』だけは信じていた。つまり二人で『リアル若者たち』をやっていたのだ。そういう過去があったせいか、私は永島氏の『若者たち』という作品には並々ならぬ思い入れがある。
実はこの作品、私が高校生の頃、NHKの銀河ドラマで一度ドラマ化されている。その時のタイトルが『黄色い涙』。私は、このなんとも言えないほろ苦い青春ドラマが大好きで毎回欠かさず観ていた。(そのときの主題歌、小椋桂歌うところの『海辺の恋』は今でもギターを弾いて歌うことができるぞ)。しかし、まさかその7年後にその舞台となった阿佐ヶ谷に住み、そして永島氏ご本人と会えるとは夢にも思わなかったなぁ……。
――と、そんな具合でいろいろ思いで深い『若者たち』。それが映画化されるとなるとイヤでも期待せずにはおられない。で、気になるその映画の監督と主演俳優だが……
監督:犬童一心 主演:『嵐』の5人
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監督はいいが主演が……。
願わくば、私の思い出をメチャクチャにしてくれた、『V6版:俺たちの旅』のようにならないことを心から望む。 いや、マジで!
【追記1】テレビでメイキング画像を紹介していたが、なんかいい感じ……。嵐の5人も、ジャニーズ系にしてはパッとしないただの若者っぽかった。監督の力量に期待。映像に出ていた商店街が阿佐ヶ谷北2丁目辺りの飲み屋街のそれに似てたな。
【追記2】しかし、どうせ映画化するなら、ダンさん(永島氏)がご存命の時にやってほしかったなぁ……。