『THE有頂天ホテル』に引き続き映画を梯子。去年見そびれた映画『ALWAYS 3丁目の夕日』を遅ればせながら観る。


【監督】山崎貴 /【出演】吉岡秀隆/堤真一/小雪/堀北真希/もたいまさこ/薬師丸ひろ子/三浦友和 /【公開日】2005/11.5 /【製作】日本


で、感想――



嗚呼…感動したなぁ… いやぁ、昭和32年生まれのオヤジとしては、なつかしいやら、せつないやら、言い様のないこみ上げる感情に耐え切れず思わず落涙しちまったよ…。


私はこの映画の原作である西岸良平の漫画『夕焼けの詩』が大好きで学生の頃愛読していた。実写映画化されると聞いたとき果たしてあの原作のような昭和30年代の雰囲気と人間ドラマが創れるのかなと懐疑的ではあった。ってゆーか、正直『ただの昭和30年代ノスタルジーブーム』にのっかった安直な映画だろうと思い期待はしていなかった。しかし、巷の『感動する』という評判を聞き、気にはなっていた。


夕焼けの詩 51 (51)

夕焼けの詩 51 (51)



  • 作者: 西岸 良平
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: コミック


良い意味で見事に裏切られた…。まぎれもなくあの昭和30年代の風景が再現されていた。それはCGやセットだけではなく、そこに住む人々も含めて。それより何より一番良かったのは、監督・脚本の山崎貴氏が原作漫画の表面を映像化したのではなく、原作漫画の内面を見事に理解し、そしてそれを監督の解釈で新しい『夕焼けの詩』を創りだしたところだろう。原作漫画の愛読者だった私としては『そうそう! 監督、わかってるじゃん!』という気持ちになり嬉しくなってしまった。


ストーリーはかなりオーソドックスな人間ドラマで、子供を使ったちょっとお涙頂戴的なところもあったのだが、それがさほど気にならず逆に新鮮に感じたのは、この作品全体に流れる”愛情”のせいだったのかもしれない。その愛情とは、もちろん監督を含め創り手(スタッフ)のこの作品と世界に対する愛情だ。そしてその愛情は原作者、西岸良平が『夕焼けの詩』にこめたものと同じものだったのかもしれない。


家族の愛、人に対する愛、それらが素直に出せた時代。貧しくても心は豊かだった時代。戦後が終わり人々が未来に希望が持てるようになった昭和30年代。『ただのノスタルジーの奇麗ごと』と言ってしまえばそうかもしれないが、そんな奇麗事に何故これほどまで多くの人々が感動するのか? 私みたいにその時代を生きたオヤジやオバサン達ならともかく、その時代を知らない若い人達までもが何故感動するのか? この映画には”ただのノスタルジー”では片付けられない何かがある。もしかしたら、この作品は昭和30年代の設定を借りた現代のパラレルワールド風のファンタジーなのかもしれない。皆が理想としている心休まるもうひとつの世界の。


今日は良い作品を2本も立て続けに観られてラッキーだった。どちらも”愛情”あふるる良作だった。私もいつかこのような作品がつくりたい… 昨今、創作に対してちょっと疲れ乾き気味だったオヤジの心に潤いを与えてもらったような気がした。


 


――子供の何気に薄汚れた顔のメイクが特に気に入った文鳥


【追記】去年末、この映画のTVCMでスタジオジブリが『貧乏がよかった』とか何とかというヘッドコピーをつけていたが、私はそれは違うと思った。貧乏がいいはずあるもんか。ジブリの人たちは本当の”貧乏な家庭”を体験したことないからそんな”貧乏を美化”したことが言えるのでは? 正直、貧乏はつらく貧すれば鈍することばかりだ。当時はそんな家庭ばかりだった。でも、それでも皆が明るく元気に生きていたのは『未来への希望』を持ち、『そのうちなんとかなるだろう』という良い意味の『楽観主義的な考え方』を持っていたからだと思う。

投稿者 mori-game

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です