三谷幸喜監督の『THE有頂天ホテル』を観た。


監督・脚本:三谷幸喜/撮影:山本英夫/音楽:本間勇輔/出演:役所広司、松たか子、香取慎吾、佐藤浩市/2006年日本映画/2時間10分/配給:東宝


で、感想――



おもしろかった! ただし、作品自体には特に”とんがった”ところとか、”刺激的な”ところはなく、いつもの三谷流ペースで淡々と描かれているので、三谷幸喜をよく知らない人や”何かを求めて”観に来た人は物足らないかもしれない。それでも映画のできを”おもしろいか?””おもしろくないか?”という分かり易い基準でジャッジするなら”おもしろい”と思う。


私はこの三谷幸喜という人の作品の中に見え隠れする彼の”こだわり”――つまり、『通受けの立派な作品』より『一般向けのおもしろい作品』を創ろうとする健全なエンターテインメント志向が好きだ。一昨年NHKで放映された彼の脚本の大河ドラマ『新選組!』は、一部の大河ドラマ原理主義者(笑)や、真面目な歴史好きから総スカンを食らったようだが、その時も私は彼の『重く立派な大河ドラマ』より『軽くおもしろい大河ドラマ』にしようとしたこだわり…というか信念が好きで毎週かかさず観ていた。


あと感じたのは、『三谷幸喜という人は、ほんとうに人間が好きなんだなぁ~』というところか。彼は役者という”人間”を生き生きと演技させることに努力をおしまない人だと思った。できるだけ役者という仮面をひっぺがし巣の人間に近づけて演技?させ、そしてそこから生まれる『おもしろさ』を彼自身が楽しんでいるようにも見える。役者にとっては大変なことだろうが、観ている側としては画面から新鮮な緊張感が伝わってきて楽しい。もともと彼は舞台脚本出身なので、その影響が映像に出ているのかもしれない。(舞台ってモロに役者の人間性が演技に影響しそうだし…)


理屈っぽい話はさておき、三谷作品ファンの方にはこの映画、かなり楽しめると思う。ドラマのあちらこちらに”三谷作品のパロディー”が散りばめられているからだ。特に『新選組!』のパロディーには笑った。(新見錦に再会して動揺する芹沢鴨には笑った)


とにかく前編にわたって三谷幸喜の人間に対する”愛”が感じられる作品だった(笑)。ほんわかと笑って、あったかい気分になりたい方には是非お奨めの作品だ。


 


――作品を観て、三谷幸喜って人はクリスチャンじゃないのか?と思った文鳥


【追記】出演者のスタッフロールが登場順というところにも何気に愛情を感じたぞ(笑)

投稿者 mori-game

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