児童向けの映画ということなので、肩に力を入れず素直な子供の気持ちになって観に行ってみました。
監督・脚本・原作:宮崎駿 /製作:鈴木敏夫/音楽:久石譲/美術:吉田昇/主題歌:藤岡藤巻と大橋のぞみ/製作国:2008年日本映画/上映時間:1時間41分/配給:東宝
で、感想……
いやぁ……、すごいですね。なにがすごいって、宮崎さんの想像力が。そして一般的な映画の「予定調和的おもしろさ」とは一味違う「不思議な新しいおもしろさ」が私にはとても楽しめました。
私は映画が好きで幼児の頃から今までいろんな作品を観てきましたが、このような作品は今だかって観たことがありません。まさに「創作物!」 反面、この作品、「むかし、むかし、あるところに……」てな具合の設定に、「昔っていつなんだよ!? あるところって何処なんだよ!?」てな大人な理屈っぽい考え方論理的思考をするタイプの人にはほとんど楽しめないかも。だって、今までの文法では読みとけないからです。この作品。だからといって「アート」というわけでもなく、あくまで「エンターテイメント」というところがスゴイわけで。
実は私、鈴木Pが初号試写を観た後に「これは傑作だ!」とほめちぎったという話を聞いたとき、「またいつもの手前ミソ的営業用ビッグマウスか、ケッ!」とか思ったりもしたのですが、それが本音だったということをこの作品を観て思い知らされました。
波がおもしろい。動きがおもしろい。ポニョがおもしろい。理解を拒むかのような不思議な世界(ちょっと怖いけど)がおもしろい。それら「おもしろい」ということに対して大人の「理屈や観念の力で作為的に表現しようとする逃げ」は一切観られず、「想像力と表現力でウンウンと産み出そう」とする、創作者の基本中の基本な姿勢は観ていて心躍ります。
あと作品の全編に渡って、宮崎氏のラストメッセージ的お説教、思想、おやくそく(コナン走りには笑った)等、暗喩的なメッセージがちりばめられ、一回観ただけでは「読み解けない」ようなので、今からはやくDVDがでないかな?と心待ちにしている次第であります……(てか、リピーターになれよ!って自分で突っ込む) 逆にそのことが、嗚呼、この作品で氏は劇業用作品を本気で終えようとしているんだなぁ……とも実感され、なんともいえぬ感慨深いものがありました。
正直、「もののけ姫」以降のシナリオは、なんか「未回答」な感じがして、いささか不満だったのですが、今回のポニョで、やっと宮崎氏なりの一つの回答が出せたのでは? と、あくまで私なりに納得しています。
「創作とは何か?」「表現とは何か?」「それは誰が創るのか?」「誰に向けて創るのか?」という基本的なことを改めて考えさせてくださった宮崎駿さん、ありがとうございました。 そして、お疲れさまでした。
【追記】しかし、生きている津波の上を疾走するポニョのイメージは強烈だったなぁ…。なんか宮崎氏の深層心理を垣間見たような気がしました。