上映館が少なそうなので観に行けるかな…と思っていたら、運のいいことに近くのシネコンで上映していたので早速観にいった。
C) 2006 TWENTIETH CENTURY FOX 原題:Little Miss Sunshine
監督:ジョナサン・デイトン、バレリー・ファリス/脚本:マイケル・アーント/撮影:ティム・サーステッド/音楽:マイケル・ダナ/出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーブ・カレル、アビゲイル・ブレスリン、アラン・アーキン、ポール・ダノ/2006年アメリカ映画/1時間40分/配給:20世紀フォックス映画
で、感想――
なんてハートフルな作品なんだ……。久々にできの良いロードムービーが観られて、ちょっと幸せな気分になった。
主となる登場人物はアリゾナに住む崩壊寸前の『負け組み家族』。人は悪くはないがヤク中で女好きの下品な祖父。『世の中は勝ち組みと負け組みしかいない』と偏った啓蒙をする売れない作家の父親。まともだが疲れきった母親。優秀な学者だったが男にふられ自殺未遂をしこの家族に転がりこんできた母親の兄。ニーチェに憧れ、人間嫌いでしゃべることを拒否する長男。そしてこの家族の中で唯一健やでミスコンテストに憧れるちょっとブスな幼い長女。物語はその幼い長女を『美少女コンテスト』に出場させるためにレンタカーを借りて家族全員でカリフォルニアへ行くことから始まる。そしてその道中、家族ひとりひとりに小さなドラマが待ち受け、そしていつしか家族の絆が再生してゆく――と、いうもの。
この作品、ファミリードラマとロードムービーを足したような作品で、どちらかというと軽めだが、シナリオと演出が絶妙で、こんがらかってしまった『家族の絆』という名の『心の糸』をときほどいてゆくその描き方が奥深く、うまい。ネタばれになるから詳しくは書かないが、そのようなシーンが全編に溢れ飽きることがない。とくにラストでの、レンタカーのミニバス自体をひとつの『ホーム』と見立ててた象徴的なシーンはなかなか感動的だ。
個人的には劇中、祖父が幼い長女に言ったセリフが印象に残った。
『おまえは負け組みなんかじゃない。負けるのが怖くて何にも挑戦しようとしない奴こそが、本当の負け組みだ』
あと、この作品、今のアメリカ社会(祖父の言うところの『クソッたれな世の中』)に対する細かな諷刺にも溢れている。
成功することだけがすばらしいのか? 何が勝ちで、何が負けなのか? 家族って何なのか? 本当の幸せって何なのか? そんな人生の問題を明るくユーモアいっぱいに描いたこの作品。機会があったら是非ご覧あれ。心が元気になりまっせ!