9.11でテロの犠牲となった4機の旅客機のうちのひとつ『ユナイテッド93便』の悲劇を描いた『ユナイテッド93』を観てきた。


 原題:United 93 /監督・脚本:ポール・グリーングラス/撮影:バリー・アクロイド/音楽:ジョン・パウエル/出演:ベッキー・ロンドン、シェエン・ジャクソン、チップ・ジエン、クロー・シェーン、クリスチャン・クレメンソン、コリー・ジョンソン/2006年アメリカ映画/1時間51分/配給:UIP


で、感想――


いやぁ……すごかった……。その胸が痛くなるほどの迫真力のある映像に驚かされ、そしていろんな意味で疲れました。


ポール・グリーングラス監督によるドキュドラマ(ドキュメンタリー+ドラマ)という手法は、まるで本当にあの事件の現場を見せつけられているような錯覚に私をおちいらせた。その創作性を極力排除し可能な限り事実に近づけようとする演出は、スピルバーグの『プライベイト・ライアン』の出だしの戦闘シーンにも勝るとも劣らない息を呑むすごさだった。


特に興味深かったのは、今までのTVや新聞等のマスコミ報道では伝えきれなかった、機内や管制センター内の人間の『記録』を可能な限りの緻密な調査をもとに忠実に再現しようとしていたところだ。ちなみに各管制センターのシーンでは当事の本物の関係者も10名ぐらい出演しているそうだ。


あと、この映画で個人的に印象に残ったシーンがあった。それはテロリスト達が”聖戦の誓い”をイスラムの神に祈った後に、乗客の一人が”救い”をキリスト教の神に祈っていたところだ。私はこのシーンを観ながら、『いったい神って人間にとって何なんだ?』という至極プリミティブな疑問が沸き、同時に何とも言いようのない憤りも感じてしまった。神は人間に一体何をさせたいんだよ!?


映画のパンフレットには、犠牲となったすべての乗客と乗務員のプロフィールが紹介されていた。このような気遣いや役者の迫真の演技を見ても、作る側の乗客や乗務員に対する最大限の敬意と、そして『あの事件が起きてしまった原因を考えること』を風化させてはならぬという社会的使命感が感じ取れる。


観る価値のある作品……いや、『記録』だ。

投稿者 mori-game

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