漫画家の永島慎二氏が亡くなった。6月10日。享年67歳。心不全だったそうだ。
24年前―― 文鳥が先輩に呼ばれて上京したその地は阿佐ヶ谷だった。阿佐ヶ谷は永島慎二氏が住んでいた街で彼の作品にもよく登場していた。当時、全財産13万円とわずかな夢だけを持って上京した文鳥にとって、この街と永島慎二氏の作品は心の支えだった。今はなくなったが、阿佐ヶ谷の南口にあった公園は彼の作品『若者たち』でよく出てきた場所だった。文鳥はヒマな時にその公園のベンチに座り、自分をその作品に登場するキャラクターに見立てて『金はないけど明日があるさ!』とよく己を励ましていたものだ。
実は文鳥、一度だけ氏とお会いしたことがある。そこで氏の口からこぼれた呟きともつかぬセリフが何故か今でも頭から離れない。
『人間って猫を見て、”楽そうでいいなぁ”なんて羨ましがりますがね、ああ見えても猫には猫の孤独があるんですよ…』
トップの右の写真が、その時氏が呟きながら書いてくださったサインと猫の絵だ。
氏の作品では『柔道一直線』が一番メジャーだが、本人はそのような商業主義的な派手な作品より、もっと人の心の深いところを描いた地味な作品の方がお好きだったようだ。作品にはいつも『孤独』『厭世』『旅』『夢』そして『弱者に対する愛』が漂っていた。 さようなら永島先生。さようならダンさん。そしてありがとうございました。あの日のことは忘れません。
永島慎二氏のご冥福を心からお祈り申し上げます。