先日の金曜日、恵比寿の東京都写真美術館で行われている『文化庁メディア芸術祭』に行ってきました。メディア芸術とは『映画、漫画、アニメ、及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術』だそうです。早い話、ちょい昔ならサブカルチャーと言われたものが、かなり社会、経済にも影響を与え始めたので、国がやっと重い腰を上げてそれらに協力的になったことを意思表示した展覧会みたいなものです。(なんちゅー説明だ……) いずれにしても、新しい才能や隠れた才能にチャンスを与える場が設けられたこと自体は喜ばしいことです。
会場で特に私の目を引いたのは、テクノロジーと融和した作品郡です。ちなみに一番退屈だったのはテレビゲームでした。(ある審査員が自分の作品を推薦出品していたのには失笑しましたが) テクノロジーと融和した作品郡の中で個人的に気に入ったのは『バーチャル・ブラウニー』という作品でした。
この作品は、実際にはいるはずのない妖精たちを、ディスプレイを通すことによって見ることができるというファンタジックなものです。ディスプレイは常にテーブル上の小箱を映し出しています。しばらくすると映し出された小箱の周りに二人の妖精が現れ、その箱を押し始めます。すると、テーブル上の箱もその押す動きに合わせて動き始めるのです。つまり、テーブル上にいる透明の妖精が箱を押しているような錯覚に陥るというわけです。いやぁ~、これは夢があります。どんな仕掛けだろうと思わず布で隠されたテーブルの下を覗き込んでいると、『あ、すみません。ちょっとそれは……』と1人の青年に注意されました。なんと、その青年がこの作品の作者の青木さんだったのです。青木さんは東京工業大学のロボット技術研究会に在籍され日々ロボットテクノロジーを研究されている学生さんです。
「鉄腕アトムを本当に創り上げるのが僕等の研究室の目標なんです」
彼のその一言に私は感動しました。それからちょっとお話をさせていただき、テクノロジーが持っている夢と可能性をお聞きすることができました。あと、展示されている作品に対しての質問もしてみました。
「この作品はとても夢があるのですが、子ども達にも見せてみたんですか?」
「はい。いやぁ、子ども達はおもしろいですね。箱の周りをバンバン叩くんですよ」
「バンバン叩く?」
「あと、箱を持ち上げてみたり、覗きこんだりと……。本当に見えない妖精がいると信じ込んでいるみたいですね。ただ、壊されやしないかとヒヤヒヤしましたがね。精密機械ですので」
「将来、玩具にできる可能性はありますかね?」
「できると思います。今はまだ高価な電子機器ですが、値段はどんどん安価になっていますから。ただ、問題は子ども達の乱暴な扱いにも耐え切れる構造にするのが難しそうですが」
青木さんが語る言葉、ひとつひとつに夢がありました。テクノロジーと人間の持つ夢との融合。この展覧会の本当の意義は、そのような方法で発見、また産み出される『人の心』そのものかもしれません。
*青木さんの所属される『ロボット技術研究会』のサイトは →こちらから
*PS:ワンダープロジェクトJシリーズでお馴染みのアニメ監督・飯田馬之介さんのアニメ『タイドライン・ブルー』も推薦されていました。